闇に光あれ。〜愛されなかった総長。愛する偽りの心を持った黒猫。〜


「昨日は何してたんだ?」

朝、妙なことを言っていたから問いただしてみる。

『昨日は松下組の組長とデートした。』
「はぁ?」

突拍子もないことに驚いて開いた口が塞がらない。

『だーかーらー。
松下組の組長とデートした帰り道、松下組の女だと思われて追いかけられた。』

なるほど。

「でも、何で松下組の組長とデートした?」
『どーでもいいじゃん。』

いきなり突き放された言い方をされた俺はイラついて

「なら、いい。」

あらかさまに不機嫌になって開いた皿を片付け始めた。

『松下組とは個人的に仲が良いだけだ。』

皿に付いたチョコレートを最後のひときれとなったフレンチトーストに付けて頬張る。

「そうか。…なんかあったら俺に言え。
お前一人くらい守れる自信はある。」

あまり使われていないシンクに使用済みの皿を置いてお湯をかけながら言う。

『馬鹿なことだな。相手は組だぞ?何も知らない奴が首を突っ込むな。』

その後の沈黙は決して重苦しいものではなくて、俺らの溝を深くした。


そっか、これが俺らの近づける一番近いキョリなんだな。


俺らにはそれぞれ秘密があって、その秘密は誰にも知られたくない。

その秘密がバレたとき、俺らは一気に脆くなる。



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