闇に光あれ。〜愛されなかった総長。愛する偽りの心を持った黒猫。〜
単車で凜花を家まで送る。
真っ暗な一軒家。
言っては悪いが雰囲気が暗い。
「いつも、ひとりでいるのか?」
なかなか単車を降りようとしない凜花に聞く。
少しの沈黙のあと、凜花は口を開いた。
『この家、売ろうかなって考えてる。』
え?
こいつの過去は聞いたことがない。けど、そんなの俺でもわかる。
この家は凜花の思い出がたくさん詰まった家だ。
なのに、なんで?
『私はこの家に居る資格がないの。』
私の話、聞いてくれる…?月夜の晩の光に照らされた短髪。遠い目。
「あぁ。」
俺らは凜花の家の庭にあったベンチに腰掛けた。
月がだんだん陰ってくる。
それと同時に凜花が話し出す。
遠い目の凜花を逃さないようにしっかり目に焼き付けながら。
凛花の成長する姿をしっかり目に焼き付けながら。
けど、俺自身が成長しないんだ。
いや、成長できないんだ。
前に進めないんだ。
だから。凛花には乗り越えてほしい。
『私の家族、すごく仲が良かったの。毎年、旅行とかしてて近所でも有名だった。
…あの時は中学一年の運動会だったかな…。』
運動会の午前の部が終わって、自分の家族のもとでお昼ごはんを食べる。そういう学校の方式だった。
食べ終わったあとに、私は生徒専用のトイレへ向かった。
運良く開いてた一番奥のトイレに入る。
鍵を閉めて腰を下ろす。