聖なる夜に、幸せを。
桜子さんは悲しそうに目を伏せた。
「サンタクロースの家系の男は、異性から人気者になれる容姿を持って生まれてきます。
ですから、クロスも幼い時から多くの女性に告白されては、パートナーにならないか誘ってはいるのですがね。
理由があり別れてしまうのです。
サンタクロースを信じていないもありますけど、やはり自分の一生を変えてしまうほどの決断ですので、クロスをそんなに長く愛せないって言う人が多くて。
トナイや他のサンタクロースの家系の人たちは、運良く良き女性に恵まれたのですが、クロスだけは何年も見つからなくて…。
クロスも最近は“サンタクロースの家系をやめたい”とまで言い出す始末でして。
…ですから、本当に驚きましたわ。
聖奈さん、あなたの話を聞いた時は」
三田くん…。
トナイさんや他のサンタクロース候補に先越されて、辛かっただろうな。
「元々クロスの周りに、サンタクロースを信じる方たちが少なくて。
一方のトナイは、周りに信じている人が多くて、誰にしようか迷っていた時期もあったほどですの」
そんな中、信じる私が現れた…。
夏ちゃんに私のことを話された時、三田くん…嬉しいと思っただろうな。
「ゼントもワタシも、強制はしません。
ですが、このままクロスにパートナーがいないのは困るのです」
「何に困るんですか?」
「パートナーに関する掟も厳しいですが、それよりサンタクロースを継ぐ本人に与えられる掟も厳しいのですよ」
サンタクロースを継ぐ本人に与えられる掟?
「今聖奈さんたちは高校2年生でしょう?」
「そうですけど…」
掟に関係あるのか?