風がさらった恋心。




『言葉にしなきゃ分からない』なんてよく言うけど、言葉にしたところでそれが本心だとは限らない。


適当な薄っぺらい言葉並べて、はいそうですか、なんて鵜呑みにする人間なんてどれだけいるんだろう。

この人だからこれは本音だろう、この顔から考えるに嘘だろう、って少しくらいは考えるはず。


だけどそれはよく知ってる人間相手に成せる技で、よく知らない一岡くんで当てはめて考えるのは難しい。


……でも、どっちだって良いや。

知らない相手、信じてない相手にどんな言葉を投げつけられようと、今更何とも思わない。





「……って、時間」





こんな所でボーッと考えごとをしてる場合じゃなかった。

もしかしたら、もう学校が終わってLINEが来てるかもしれない。


すぐに返事をしないと、あの人はすぐに心配する。

本当に呆れるほど心配性。




だけど、これほどまでにあの人を心配性にしたのは、他の誰でもない、私だから。







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