風がさらった恋心。
……バカだなぁ、礼央は。
消えたりなんかしないことは、あんたが一番よく分かってるはずなのに。
消えられるなら、こんな風に彷徨ったりしないよ。
迷ったり、困ったり。
苦しんだり、嘆いたり。
泣いたり、怒ったり。
こんなことばかり繰り返して、ボロボロに傷付いたりする前に、消えてるよ。
消えたいと思って簡単に消えられるなら、とっくに私は消えてる。
心が壊れてしまう前に、こんな世界、捨てられれば良かったのに。
「……それが、出来んけ…っ、壊したんやろ」
感情を、関係を、思い出を、全部無駄なものだって一括りにした。
これ以上傷付かずに済むように、壊した。
それなのにちっとも救われない。
この世界は今だって平気で私を苦しめ続ける。
そんな自分に対して虚しさは募るばかりで、もう何が正しいのか分からない。
『そろそろ教室出ろよ』
いつもと同じメッセージが届いたのを合図に、私は重たい心を、体を、引きずるように歩きながら、教室の施錠を始めた。