風がさらった恋心。
だって、礼央を失ったら、どうやって生きたらいいか分からなくなるの。
だから礼央は何も言わないんでしょ?
好きだって、一度も私に直接は言わないんでしょ?
昔からずっと一緒できっとお互いに知らないことなんて、何もなくて。
だからきっと礼央だって知ってるんだ。
……私がその想いに応えられる日が、来ないってこと。
「葵、どうしたん、ボーッとして」
「え……?」
突然礼央が振り返って、ハッと我に帰る。
「課題。葵は何の教科が出たん?」
「……あっ、えっと、何があったけな?」
しっかりしろよって、礼央が笑う。
彼が今言った意味とは少し違っても、自分でだってそう思う。
いつまでも礼央に甘えて、ここでお世話になっていいはずがない。
中学を卒業してから私はここで生活している。
どうしても書類のサインや支払いなど、親が必要になる時は家に帰ってテーブルの上に置いておく。
そしたら次の日の朝、家に行けばちゃんとテーブルに置いてある。