風がさらった恋心。




「別にいっつも教室でボーッとしよるだけやけど」

「一人で?友達とかおらんの?」

「放課後に教室で毎日ボーッとしてくれる友達とか、おるわけないやん」

「そっか。そりゃそうやね」




……とは言いつつも、そんなの別に放課後に限らない。

高校に入ってから友達なんていない。

いや、違う。作ろうとしなかったし、欲しいとも思わなかった。


誰かを信じるっていう行為から、私は明らかに逃げて生きてる。

だって、親すら信じられないような世界で、どうやって他人を信じられるっていうの?




「葵っちさ、本当学校のこと話さんよね」

「……だって別に礼央に話すほどのことなんて無いし」




人と関わらないのに、何も起きるわけがない。


楽しいや幸せ、嬉しいなんて感情を知ってしまったから、つまらない、不幸、悲しいを感じるんだよ。

もう一度あの孤独を味わうくらいなら、私はもう何かを求めたりしない。





「……俺は学校じゃ一緒におってやれんのやけ、誰か一人くらい少しは信じれるやつ捜せよ」







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