風がさらった恋心。
「……うん」
「いっつも、何しよるん?」
……こういう時、何て言えばいいの?
やることがなくて暇してた中で、圧倒的なスピードで走る一岡くんを見つけて、その日からずっと眺めてたなんて、どうしたら言えるっていうの。
暇つぶしに利用させてもらってましたとか、口が裂けても言えない。
「……ただ、人を待っとるだけ」
口から出たのは、ある意味本当のこと。
帰らずに一岡くんを眺めてるのは、その人を待ってる間の退屈しのぎ。
「そっか……。あ、てか、わざわざ持って来させてごめんね」
だけど私の口から出た声は自分で想像したよりずっと冷ややかで、明らかに目の前の一岡くんは動揺を見せた。
そして慌てたように私の手からタオルを受け取って、笑顔を作る。
……何やってるの、私。
「じゃあ、休憩終わるけ……っ」
この気まずい空気から逃れるように一岡くんは背を向けて階段を下りようとする。
嘘だ。休憩時間はまだ始まったばかり。
まだきっと半分も経ってない。
「……頑張ってね、一岡くん」