君が好きだよ

 本当なら毎日ご飯作りに来たいんだけど。
 そう言って彼女が笑う。


 自分だって毎日彼女の作る料理が食べたい。
 心からそう思っているけれど、俺の口にはやっぱりロックがかかっていてそんな言葉は出て来ない。


 食事が終わると、彼女はキッチンで食器を洗い始めた。
 時間的にそろそろ限界が近づいている。後片付けが終わったら彼女は帰ってしまう。駅まで送って行って、それで終わりだ。
 言うなら今しかなかった。面と向かっては無理でも、せめて肩越しになら。


「なあ」


「はい?」


 勇気を振り絞って出した声は決して大きくはなかったが、彼女はちゃんとキャッチして反応してくれた。
 今更ためらっても仕方ない。これを逃したら多分もう自分は切り出す事が出来なくなる。


「旅行、行かないか。来月少しまとまった休みが取れそうなんだ」

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