おいしいチェリーのいただきかた☆
「見たかったな、その小宮のパンジー」
いつもの優しい笑顔で花に水をやってる小宮の姿を想像すると、自然と笑みがこぼれる。
目の前のオレンジの花に小宮を重ねながら言うと、
「比奈さんは一度見てるよ。まだ蕾の頃だけど」
小宮から意外な返事が返ってきてビックリした。
「えっ!? ホント!? ……あ、でも、確かに去年、花壇をちょくちょく見に行ってたから見てるかも……」
「それだけじゃなくて。去年の秋、僕と話したこと、覚えてない?」
えっ?
「小宮と? どこで?」
思わず勢いよく振り返って訊いた。
「裏庭の花壇で。一緒に花壇を直したんだけど……覚えてないよね」
花壇を直す……確かにそんなコトもあったような……。
でもよく思い出せない。
小宮だけ覚えてるなんてズルイ!
「いつ!? どんな状況で!? どんなコト話したの!? 詳しく聞かせて!」
あたしの剣幕に押されて、ちょっと身を引く小宮。
「えっと……」とずれたメガネを直しながら、あたしを見返した。
それから、語ってくれたのだ。
去年の九月の終わり。
あたしと小宮が初めて言葉を交わした、その日のことを。