おいしいチェリーのいただきかた☆
 
「え? なんで……」
 
「比奈が心配だから見てきて欲しい、って小宮が……」
 
「小宮?」
 
「それはまぁいいんだけど。比奈」
 
「ん?」
 
「イツキには気をつけな」
 
 
へ?
 
 
「いい機会だから、アイツとは切れちゃいなよ。実はあたし、あんまりアイツ好きじゃない」
 
「えっ? そうなの?」
 
驚いた。麻美がこんな風にハッキリと人の好き嫌いを言うなんて。
 
麻美は真面目な顔で歩きながら前方を睨んで言った。
 
「アイツの比奈を見る目……気に入らない。比奈のこと、ちゃんと分かってない」
 
「どういうこと?」
 
意味が分からない。
 
「分かんないならいいよ。とにかくイツキにはしばらく近寄っちゃダメだよ」
 
そう言うと麻美は厳しい表情のままあたしに視線をくれた。
 
「うん……」 
 
さっきのイツキの様子。確かにおかしかった。
 
でも大事な友達だから……切れる、なんてのはヤだな……。
 
また明日にでもイツキと話し合ってみよう。
 
 
もやもやした気持ちを振り切るように決意しながら廊下を歩いた。
 
だけど、再会を翌日まで待つことはなかったのだ。
 
 
 
この日の放課後。
 
 
 
事件が起きたから。
 
 
 
 
 
 
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