おいしいチェリーのいただきかた☆
 
「比奈さん、大丈夫!?」
 
呆然とイツキの背中を見送ってると、いつのまにか小宮があたしの顔を覗きこんでいた。
 
心配そうな顔。
 
大丈夫って……それはあたしのセリフだよ。
 
「平気平気。まったくイツキったらどうしちゃったんだろうね。ホントにごめんね小宮」
 
笑おうとしたけどうまく笑えなかった。
 
頬が引き攣ってる。あれ? なんか泣きそうだあたし。
 
歩こうとしたら足に痛みが走った。
 
ああ。膝を擦りむいてる。どうりでさっきから痛いと……。
 
 
「比奈さん……。足、怪我してる。一緒に保健室に行こう。僕は大丈夫だから……彼のことも、そのうちなんとかなるよ、きっと。だから安心して。ね?」
 
言われて見上げると、小宮の優しい瞳があたしを見つめてた。
 
どう見ても全然大丈夫じゃないのに。ムリしちゃって。ひとの心配ばっかして。
 
頭を……撫でてくれた。
 
なんだかくすぐったくって気持ちいい。
 
 
あはは。おかしいね。いつもと立場が逆だ。
 
小宮に励まされるなんてね。
 
 
いつのまにか潤んでた視界を閉じて、こくん、とひとつ頷いた。
 
 
もう一度顔を上げた時には、笑ってみせることができた。
 
 
 
 
 
 
< 186 / 335 >

この作品をシェア

pagetop