おいしいチェリーのいただきかた☆
 
「小宮く~ん! 数学で分かんないところがあるんだけど、教えてくれる~?」
 
 
甘さを含んだ黄色い声が数席向こうの小宮に向けられる。
 
ナニアレ。ノートに走らせてたシャーペンの芯がポキッと折れた。
 
あのコ達、1組のコじゃない? 教室何個またいで来てんの。自分のクラスのヒトに訊きなよっ。
 
 
「あ……うん。僕でよければ……」
 
 
ヒトが好すぎんのよ小宮はっ。女の子苦手なんだから断りゃいいのにっ。
 
自席で自習しながら耳をそばだてるあたしの数席向こうで、神経を逆なでしてくれる会話が繰り出されてる。
 
もちろん、小宮は真面目に質問に受け答えてるだけだ。だけど周囲を囲む数人の女の子達はとても真面目に質問してるとは思えない。
 
 
「えっと、まずこの式で因数分解できるところは……」
 
「あぁ~~小宮君、このペン使ってんだぁ! あたしも全色持ってんだぁコレ」
 
 
ノートに書きながら解説する小宮の手元をわざとらしく覗き込んで発される声。
 
説明を聞きなよ。ペンはどうでもいいっしょ。
 
 
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