おいしいチェリーのいただきかた☆
もちろん、週末にデートはしてる。
だけど何故かデートの時はカンカンに晴れてるんだよね。あたしにケンカ売ってんのかお天道様は。
ああっ! あのカップル、腕まで組んじゃってる!
ちょっと! 一応まだ校内でしょそこ! 風紀委員! 風紀が乱れてますよーっ!
そんな風にラブラブカップルにやっかみ視線を送ってると。
「比奈」
背後から名を呼ばれた。
聞き覚えのある低い声に一瞬身がすくむ。
ゆっくり振り返ると、そこに立ってたのは――
「イツキ……」
喉が絞られたように苦しくなった。
ずっと話を聞きたかったんだ。何から訊けばいい?
なんで小宮を殴ったの?
なんで最近荒れてるの?
あの時、あたしに何を言おうとしたの――?
言いたいことはいっぱいあるのに、言葉が出てこない。
もう、触れなくてもいいなら触れたくないような、そんな弱気になる。
だって、今、あたしの目の前に立つイツキは、すっかりいつものイツキに戻ってるんだもん。
ちょっとシニカルな笑みを持つ口元。力強い瞳。
チャラッとしているようで隙のない、全身から漂う野生的なオーラ。
まるで何事もなかったかのような。いつものイツキ。