おいしいチェリーのいただきかた☆
 
もちろん、週末にデートはしてる。
 
だけど何故かデートの時はカンカンに晴れてるんだよね。あたしにケンカ売ってんのかお天道様は。
 
 
ああっ! あのカップル、腕まで組んじゃってる!
 
ちょっと! 一応まだ校内でしょそこ! 風紀委員! 風紀が乱れてますよーっ!
 
 
そんな風にラブラブカップルにやっかみ視線を送ってると。
 
 
 
「比奈」
 
 
背後から名を呼ばれた。
 
聞き覚えのある低い声に一瞬身がすくむ。
 
ゆっくり振り返ると、そこに立ってたのは――
 
 
「イツキ……」
 
 
喉が絞られたように苦しくなった。

 
ずっと話を聞きたかったんだ。何から訊けばいい?
 
なんで小宮を殴ったの?
 
なんで最近荒れてるの?
 
あの時、あたしに何を言おうとしたの――?
 
 
言いたいことはいっぱいあるのに、言葉が出てこない。
 
もう、触れなくてもいいなら触れたくないような、そんな弱気になる。
 
だって、今、あたしの目の前に立つイツキは、すっかりいつものイツキに戻ってるんだもん。
 
ちょっとシニカルな笑みを持つ口元。力強い瞳。
 
チャラッとしているようで隙のない、全身から漂う野生的なオーラ。
 
まるで何事もなかったかのような。いつものイツキ。
 
 
< 214 / 335 >

この作品をシェア

pagetop