おいしいチェリーのいただきかた☆
 
「キス……小宮からがムリなら、またあたしからしちゃうよ?」
 
「そっ。それは……。やっぱり男としてはされるよりする方が……」
 
「じゃあもうちょっと頑張ろうよ! 脱・チェリーしたいんでしょ?」
 
この時あたしは「うん」って返事が当然返ってくるものと思ってた。
 
パッと覗き込んだ小宮の顔が縦に振られず、真面目な表情になっているのに気付く、その瞬間まで。
 
 
「……そのことなんだけど比奈さん……」
  
言いにくそうに目を伏せる小宮にドキッとした。
 
え? なに? もしかして。
 
 
なかったことにして欲しい……とか?
 
 
浮かれた気分が一瞬で沈み、ズキン、と胸が痛む。
  
以前言われたことが頭をよぎった。
 
……そうだ。小宮は一度お願いを取り下げた。
 
やっぱり僕には無理そうだから……って。
 
あの時と同じこと言おうとしてる?
 
 
「僕……」
 
 
やだ。聞きたくない。
 
言葉を遮りたいと思った瞬間、勝手に上擦った声が出た。
 
 
「で、でも小宮も頑張ってるもんね! 焦る必要ないと思うよ、うん!」
  
 
あわわわっ。わざとらしすぎるよ今の。
 
き、気まずい。顔を逸らしてサクランボのパックを開ける。
 
一粒くわえるけど、なんだか甘味を感じない。
 
……美味しくない。
 
 
 

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