おいしいチェリーのいただきかた☆
「ウチのキャストさんは結構古株さん多いんだよ。もう八年も勤めてる人もいんの! そろそろ引退かなーって言ってたけど……。でも、人を楽しませる仕事はずっと続けていきたいんだって。スナックのママとかになるかも」
「そっか……店の人はもう家族同然なんだね。この店は比奈さんの第二の家なんだ?」
「うん、ウチよりこっちの方が家っぽいかも。ウチでは一人のことが多いから」
笑いながら小宮に顔を向ける。だけど小宮の顔からは笑みが消えてしまった。
「一人……なんだ。お父さんはもしかして……」
「あたしが小さい頃出てったの。性格が合わなかったんだって」
微かに目を見開く小宮。
やだな。そんなに珍しいことじゃないと思うけど。
「ごめん……嫌なこと思い出させちゃったね」
「別に嫌なことじゃないよ。覚えてないし。やだなー小宮、そんな顔しないでよ。お父さんがいなくても全然平気で生きてこれたし、むしろ楽しいコトいっぱいあったよ? キャバ嬢に遊んでもらえるなんて、滅多にない環境っしょ?」
「うん……そうだけど……。やっぱり、淋しく思うことがあったんじゃないの?」
言われてふと頭をよぎったのは、小さい頃、嫌いだった夜の部屋。冷たくて真っ暗な自分の部屋だった。
でも気付けばいつも朝になってたし、朝はママがキッチンに立ってお味噌汁を作ってた。
ほとんど徹夜状態なのに、ママは毎朝ご飯を作ってくれたんだ。