おいしいチェリーのいただきかた☆
「アンタもたいがい乙女だね~上田さん」
その時、いつのまにか降りた静寂を突き破るように聞こえてきたのは麻美の声だった。
ため息混じりに言葉を落とした後、フッと笑う麻美。
その目はとても優しかった。
「エッチは最後にするもの、なんて古過ぎだよ。エッチは最初にするものでも最後にするものでもないよ」
チラッと一瞬あたしを見る。
「そんなに重いもんじゃないよ。軽いもんでもないけどね。好き合う二人が自然と通る通過点っしょ? その先はまだまだあんの。本当に好き合ってる仲なら、エッチくらいで終わりになんないし、エッチだけを求めないもんだよ」
麻美の声は、しんと静まり返った教室によく響いた。
自分が注目されてるのに気付いた麻美は、ちょっと照れながら前に向き直る。
あたしと上田さんに背中を見せたまま、
「まぁ……でも急ぐ必要はないと思うから。自分のしたいようにすれば? せっかくの恋だからね。ゆっくり甘酸っぱい気持ちを味わってけばいいんじゃん?」
ぶっきらぼうのように見えて、でも優しさを含んだ声で言った。
甘酸っぱい気持ち……。
あのふわふわな気持ちがそうなのかな?
あれが恋?
あたしは……小宮に恋してるの?
分からない。分からないけど、無性に小宮に会いたい。
会えば分かるような気がする。
小宮とどうしたいのか。
この気持ちが何なのか。