おいしいチェリーのいただきかた☆
 
 
今の……なに?
 
 
「隣のクラスのコだよ、あれ。とうとうコクるつもりなんじゃん?」
 
前の席からやってきた麻美に言われ、硬直状態が解けた。
 
 
「コク……ハク……。小宮に……」
 
 
なんでよりにもよってこのタイミングで。
 
まだ小宮はフリーだ。イエスの返事をしたって悪くない。
 
さっきまで上昇気流に乗ってたテンションが一気に下がった。目の前が真っ暗になってくる。
 
 
「あ、あたし、様子を見てくるっ!」
 
 
鞄をひっつかみ、二人を追うべく教室を飛び出した。
 
 
『比奈さん、ふぁいとぉ~!』
 
 
背後から聞こえてくる女子の声援。
 
なにを応援されてんのあたし? 
周りにじろじろ見られてますがっ!
 
振り返るのも恥ずかしくて廊下の先を見渡すと、ちょうど階段に消えてく二人の姿が見えた。
 
慌てて追いかける。
 
 
イヤだ、小宮。あたしを置いてかないで。あたしから離れてかないで。
 
 
黒いもやもやが辺りを漂い始めて泣きたい気分になった。
 
あたしは二人を追いかけてどうするつもりなんだろう。
 
 
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