おいしいチェリーのいただきかた☆
 
外に出ると日はすっかり沈み、夜のネオンが空を明るく照らしてた。
 
 
 
 
「今日はちょっと変わったところ行ってみっか? カラオケとかついてるのはどうよ?」 
 
軽い調子で訊いてくるイツキにぎこちない笑みを返す。
 
「う……ん」
 
うまく笑顔が作れない。
 
もっとテンション上げなきゃ、と思うほどに笑えなくなってくる。
 
 
なにやってんの。へこみすぎだよ、あたし。友達一人とサヨナラしたくらいで。
 
「ヤなことがあったんだろ? 遊んで忘れようぜ?」
 
頭を優しく撫でられ、コクンと頷いた。
 
 
 
イツキに撫でられるのは好き。
 
誰かとサヨナラする度に、イツキはこうしてあたしの頭を撫でてくれた。
 
それから一晩中、あたしの気晴らしに付き合ってくれた。
  
それは仲間なら誰に対してもそうなんだけど。
 
そんなイツキだからこそ、仲間に慕われてんだ。
 
あたしにとってもイツキは大事な友達。
 
失くしたくない友達の一人。
 
だからイツキとパーッと騒げば楽しくなって。
 
大抵のコトは吹っ飛ばせる筈なのに。
 
筈なのに……。
 
 
足が……どんどん重くなっていく………。
 
 
 
夜のネオンも。
 
いつもは優しい光に見えるのに、今日は目に痛い。
 
どうしてなんだろう。こんなに明るくて楽しそうなのに。
 
部屋に一人でうずくまってた、あの時のように心が寒い。
 
イツキが手を引いてくれる。
 
あたしを明るい場所へと連れていってくれる。
 
なのになんで……。
 
 
 
 
この手は小宮の手じゃない、なんて思うんだろう。
 
 
 
 
 
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