おいしいチェリーのいただきかた☆
 
「比奈。目を覚ませ。俺と一緒に来い」
 
  
再びイツキの手が伸びてくる。
 
「やだ。行かない。もう小宮以外とエッチしない」
  
身を退きながらイツキを睨んだ。
 
 
「つべこべ言ってんじゃねぇっ! 今更キレイごと言ったって、もう遅いんだよお前は!」
 
 
逃げようと走り出したけど、一瞬にして腕を掴まれる。
 
身をよじって叫んだ。
 
 
「早いも遅いもないもん! あたしは変わったの! もう以前のあたしじゃないんだよ!」
 
 
「うるせぇっ! 俺に逆らうなっ!」
 
 
「離してっ! やだっ!」
 
 
「来いっつってんだ――」
 
 
 
 
「比奈さんっ!」
 
 
 
その時、聞こえる筈のない声がした。
 
 
驚いて顔を上げると同時に黒い影が走る。
 
その影は横からイツキに体当たりして、振り返ろうとしたイツキを弾き飛ばした。
 
 
そしてあたしを庇うように、目の前で立ちあがる背中。
 
 
細いけどしっかりあたしを守ってくれる、その不思議な安心感のある背中の主は。
  
 
 
 
「小宮っ!」 
 
 
 
 
 
 
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