おいしいチェリーのいただきかた☆
 
「ちっ。ナイト気取りかよ優等生」
 
一度地面についた膝をゆっくり起こしながらイツキが吐き捨てる。
 
「比奈を助けにきたってか? こんな汚れモンの貞操、今更守ってやったって仕方ないだろうによ」
 
耳に痛いセリフがあたしの胸を突いた。
 
イツキまであたしのことそんな風に思ってたんだ。汚れモン……そうだよね。
 
あたしなんか小宮に守ってもらう資格――
 
 
「やめろっ!」
 
 
その時、小宮の体が弾かれたように跳んだ。
 
暴力なんて全く無縁だった小宮の細い腕が振り上げられる。
 
でもその拳はイツキの手の平にアッサリ止められ、
 
 
「甘いぜひょろメガネ!」
 
 
ドカッ
 
 
お腹を蹴り返され、後ろによろめく小宮。倒れそうになる肩をあたしが駆け寄って抱きとめる。
 
「無茶しなくていいよ小宮! あたしのことなんて――」
 
顔を覗き込んで言うと。
 
 
「比奈さんは汚れてなんかない」
 
 
細い肩を支えるあたしの手に、小宮の手が重なった。
 
 
 
< 316 / 335 >

この作品をシェア

pagetop