おいしいチェリーのいただきかた☆
「あの時は自分に自信がなかったし、比奈さんに嘘ついてるって負い目もあったから……離れた方がいいって思ったんだ。僕がいることで、比奈さんを大事にしてる友達との仲にヒビが入るのも悪いと思ったし……」
「そう思うんなら今すぐ比奈の前から消えろよ! 何度も言わせんな! 比奈は俺達の仲間だ! はきだめ野郎の仲間なんだよっ!」
そんな。イツキ――
「こいつは男好きの遊び人だ。結構じゃねぇか、それで。俺達はバカでろくでなしの集まりなんだ。それに大した理由はいらねぇ。放っといてくれりゃいいんだよ!」
これがイツキの叫び――
「バカはバカの世界で楽しくやってんだ! 安っぽい同情で簡単に分かってもらいたくなんかねぇんだよっ!」
これがイツキの叫びなんだ。胸が痛いよ。
自分のこと、ろくでなしなんて――
突き刺さる言葉に圧倒されて、身が凍った。なんて言ったらいいか分からない。
だけどそんなあたしの横でイツキの叫びに負けない凛とした声が響いた。
「確かに、僕には分からないよ。幸せに生きてきた僕には、君の気持ちも、比奈さんの気持ちも本当に理解することなんて――。……でも、だからって世界が違うなんて、そんなことあるもんかっ!」
その言葉はネオン街を突き抜け、夜空に吸い込まれていった。
「僕らはみんな同じ高校生じゃないかっ! 同じことで泣いたり、笑ったり、傷付くじゃないか! 同情なんてしなくても友達になれる! 好きになってどこが悪いんだ!?」
小宮――
「勝手に垣根を作ってるのは君の方だっ! 君が一人でいじけて世界を作るのは勝手だけど、そこに比奈さんを巻き込むなっ!」
「――っ! うるせぇっ!」
カッとなり、足を踏み出すイツキ。
振り上げた拳が小宮の顔面を狙う。
でも小宮は直前で身を捻りながら腕でガードした。