おいしいチェリーのいただきかた☆
目の前には小宮がいる。
いつもの茶色い縁のメガネをかけて、気弱そうな笑みを浮かべた小宮が。
そのダサいメガネ、なんとかして欲しいけどまぁ仕方ない。メガネって結構高いしね。
でも、服装はもう少しなんとかなったんじゃない?
あたしは小宮の恰好を上から下までマジマジと見つめた。
水色デニム地の長袖シャツの中に、白いTシャツ。
中途半端によれよれなジーンズ。
なんてゆーかいわゆるアキバ系?
「小宮ぁ~。デートにその恰好はないんじゃない?」
「えっ!? これ、どっかマズかった? 僕こういうのしか持ってなくって」
不満げに頬を膨らますあたしを見て、小宮は焦った顔で言った。
「マズいなんてモンじゃないよ。やる気ないのかと思っちゃうよ~?」
「え……そうなの?」
真剣に心配顔になって「どうしよう……」と焦りだす小宮。
コイツ、初体験どころか初デートもまだだよ絶対。
「そのシャツとか、いかにも近くのスーパーで一枚500円のヤツってカンジじゃない? ブランド物で固めろとは言わないけど、せめてTシャツくらいはこだわりを見せなきゃ」
「そ、そっか……。確かに、服はいつも母さんが近くのスーパーで買ってくるのを着てるから……」
信じらんない。服を自分で買ったことがないなんて。
「まぁ、もういいけどさ。初体験するって記念日なのは小宮だから。小宮がそれで納得してるんならいいよ」
言うと、小宮のしょんぼり顔はさらにしょんぼり萎んだ。
しょうがないヤツ。このくらいで許してやるか。