おいしいチェリーのいただきかた☆
 
「るせぇ! 女だからって容赦しねぇぞ!」
  
「嘘つき! 本当は人を殴るのなんか好きじゃないくせに! 暴力を一番嫌ってるくせに! どうして自分で自分を傷付けんの!?」
  
「比奈っ!」
  
「ダメだよ、どかない。……あたしは、好きな人が傷付くのも、大事な友達が傷付くのもヤだもんっ! これ以上やるんならあたしだって全力でイツキを止める!」
 
 
二人の間を阻むように両手を広げた。
 
それがどんなに無茶でも。意味のないことだとしても。
 
あたしがイツキにできるのは、このくらいしかないから――
 
 
 
「比奈さん……」
 
小宮の手が後ろから肩に置かれる。
 
あったかくて、気持ちいい手――
 
あたしを包んで、守ってくれる手。
 
 
イツキには、この手を差し伸べてくれる人がいない。
 
 
いないんだ。
 
 
涙がぽろりと零れた。
 
 
 
 
「比奈……」
  
 
あたしを見つめながら、徐々に勢いをなくしていくイツキ。
 
目に戸惑いが浮かび、拳が下りる。 
 
怒りの炎を消したイツキは、子供みたいにか細く見えた。
 
 
あたしの大事な友達。
 
本当は優しくて、傷付きやすい友達――
 
 
 
 
「友達だから……止めたいんだよ……」
 
 
 
 
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