おいしいチェリーのいただきかた☆
 
「んなつまんねー女にゃ、もう用はねぇよ。一発殴れたらって約束だしな。どこにでも行っちまえ」
 
あたし達にくるっと背を向ける。
 
 
「お似合いだよお前ら。勝手に青春してろ」
 
「イツキ!」
 
「……もうお前は仲間じゃねぇ比奈。俺たちとつるむのはやめとけ」
 
違う、やだよ、そんなお別れ。
 
 
追いかけたいけど、背中が「来るな」と語っていた。強い拒絶の前に足が竦む。
 
 
だけど。
 
 
  
「あ、あの、待ってくれるかな、イツキ君!」
 
 
そんなのものともしない小宮が、その背中に声をかけた。
 
 
「んだよ! てめぇに君付けされたくねぇよ気持ちワリぃ!」 
 
 
思わず反応して振り返るイツキの顔は、完全に意表を突かれた顔だ。
 
 
すっ、すごいよ小宮っ! さすが天然っ!
 
 
小宮は自分でも場違いを自覚してるのか、少し恥ずかしそうに、でも真摯な瞳で言った。
 
 
「あ、ごめん。でも、その……僕が勝手に思ってるだけだけど……。僕らの間に、垣根はないから。僕はみんな仲間だと思ってるよ。……君も、比奈さんも。同じ高校生って仲間だって」
 
 
「――っ。寒いセリフ言ってんじゃねぇっ! 勝手に仲間にすんなっ!」
 
 
怒鳴って返すイツキだけど、頬が微かにひくついてる。
 
あれ? もしかしてちょっと照れてる?
 
なんだか可笑しくなってくる。
 
でも続く小宮の言葉は――
 
 
「だから、僕も、比奈さんも遠慮はしないよ」
 
 
あたしをハッとさせた。
 
  
そうだよ。あたしも、遠慮なんかしたくない。
 
 
 
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