おいしいチェリーのいただきかた☆
  
あたしの差し出したお茶を受け取ろうとする小宮。
 
その時、指先が触れてビクッと手を引っ込めた。
 
 
 
「このくらいで意識してどうすんの小宮。そんなんじゃこの先、生きてけないよー?」
 
 
女性がまったくいない職場で働くつもりなんだろうか。
色々と小宮の将来が心配だよ。
 
 
向かいのソファーに座ってたのを、おもむろに移動して小宮の右隣に座る。
 
ライトの色が赤だから分かりにくいけど、きっともう真っ赤になってる。
膝に置いた手の指先が震えてるもん。
  
 
すっ、とその手にあたしの手を重ねてみる。
 
  
ぴくっと跳ねる指先。
  
恥ずかしそうに伏せた目は、前髪に隠れてよく見えない。
 
もう……今度切ってもらおっと。
 
 
「じゃあしばらく、こうやって手を置いたまま歌うから。これも修行だと思って我慢するんだよ、小宮」
 
「うん……」
 
 
そして宣言どおり、手を重ねたままあたしは一曲歌った。
 
 
春っぽい、柔らかくてふわふわした曲を歌いながら。
 
だけどあたしの意識は、左手にばかり向いていた。
 
熱を伝えてくる左手に。その下の、小宮の感触に。
 
 
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