課長、ちゃんとしてください。
真顔であたしを観察するように見つめてくる課長を見ていると、さっきの言葉がぐるぐると頭を回った。





ーーー課長に気に入られようとしている




ーーーいい子ちゃん





いつもなら、少しくらい陰口をたたかれたって、それほど気にならないのに。





今日は、どうしてだろう、




…………苦しかった。






喉に何か詰まったように、息が苦しかった。





目頭が勝手に熱くなって、じんわりと視界が滲む。




あたしは慌てて、両手で顔を覆った。







「………あべちゃん?」






課長の柔らかい声が、耳を撫でる。





何も答えられずにいると。






「あべちゃん」







課長の長い指が、あたしのほうにすうっと伸びてきた。






「…………課長?」






< 120 / 222 >

この作品をシェア

pagetop