課長、ちゃんとしてください。
ひた、と頬に触れた、ひんやりとした指先。






「あべちゃんてば、まぁた、そんな顔して………」






課長の甘い声が、すぐ耳許で聞こえたきがして、心臓がどきりと跳ねた。






信じられないくらい、胸がばくばくいっている。




今まで生きてきた中で、こんなに動悸が激しくなったことはない。






―――課長に聞こえているかもしれない。





そう思った瞬間、あたしは慌ててがばっと立ちあがった。







「か、課長!」」







オフィスに響き渡るくらいの大声が出た。




課長が驚いたように目を丸くして、あたしを見つめている。






「………どした~? あべちゃん」






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