課長、ちゃんとしてください。
「…………え、え?


か、ちょ……?」







いきなり抱きしめられたことをやっと理解して、驚きのあまりあたしの涙は一瞬とまった。





あたしの狼狽をよそに、課長は腕にぎゅっと力をこめる。





課長の胸にぐっと押し当てられた耳に、とくん、とくんという課長の心臓の音が聞こえてきた。





こんなに近くで、他のひとの鼓動を聞いたのは初めてだった。






ーーー心臓の音って、こんなに心地いいんだ………。





でも、あたしの心臓の音は、自分でも不愉快になるくらいうるさかった。







「………ねぇ、あべちゃぁん」






課長の柔らかい声が、あたしを呼ぶ。







「そんなに肩肘はって生きてるとねぇ、いつか息切れしちゃうちゃうよ~?」







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