課長、ちゃんとしてください。
そうこうしているうちに、いつの間にか涙はひっこんで、濡れた頬もすっかり乾いていた。





あたしは課長の胸に手の平を当て、ぐっと押して身を離した。







「………涙、止まりました。


お見苦しいところをお見せしてしまって、すみませんでした………」







たぶん赤くなっているであろう頬を抑えながらちらりと課長の顔を見上げると、課長はなぜか唇を尖らせていた。




三十代なかばの成人男性の表情としては、およそ相応しくないものである。





あたしは怪訝に思って、「課長?」と言った。







「なあんで、見苦しいなんて言うのさ~?」







課長が不服そうに口をひん曲げながら呟く。






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