課長、ちゃんとしてください。
あたしは黙々と、そんなことを考えていた。





その思考を遮る、間延びした声。







「あべちゃーん。俺のこと、忘れてないか~い?


おじさん、さみしいぞ〜」







視線を上げると、柔らかく細められた目があたしに向けられていた。







「………すみません。

すっかり忘れてました」







正直に答えると、課長が頬を膨らませた上に唇を尖らせ、「ひどぉい、あべちゃ~ん」と泣き真似をした。





35歳にもなってそんな子どもじみたことをする神経が、本当に理解不能だ。







「まぁたなんか、難しいことぐるぐる考えてたんでしょ〜?


俺とお話ししてるんだから、集中してくれると、とぉっても嬉しいだけどな〜」






「………すみません。以後気をつけます」






「うははっ、真面目だねぇ〜。


よろしーい、許してしんぜよーう」






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