課長、ちゃんとしてください。
課長、いい加減にしてください
*
お昼を知らせるチャイムの音。
課長は鞄を持ってあたしの隣に立つと、「さぁて~、行こうかにゃ~」とふざけた口調で言った。
ツッコミたいのを必死で堪えつつ、あたしは無言で立ちあがる。
オフィスを出ようとしたところで、連れだって歩くあたしたちに気づいた山口さんが声をかけてきた。
「あれ、課長、阿部さんとランチですか」
「そうだよ~ん」
「珍しいですね」
「へっへ〜、やっとのことで、口説き落としたんだな~」
「なっ、ちょ、やめてください課長」
人聞きの悪い言い方をされて、あたしは課長を軽く睨む。
課長は「冗談だよ~ん」と笑った。
その隣で、あたしは呆れ返る。
冗談なんて、なんの意味があって言うんだろう?
あたしには心底わからない。
昔からよく「冗談の通じない奴だ」と言われてきたけど、別に冗談なんか通じなくても何も問題ないと思う。