課長、ちゃんとしてください。
課長はふふっと意味深な笑みを浮かべ、「イイコトはイイコトさ〜」と何の答えにもなっていないことを言った。







「だってほらー、残業中のオフィスで二人きりでー、上司と部下でー、よくある胸キュンシチュエーションじゃ〜ん」






「………は?」






「あべちゃんてさ〜、よく本とか読むんでしょー?

オフィスラブ小説とか、読まないの〜?」






「なんですか、それ。社内恋愛の小説ですか?

あたし、本は古典か、近代文学しか読まないんです。

夏目漱石とか森鴎外とか芥川とか太宰とか川端やすな」






「はいはいはーい、ストップストップー」






あたしがせっかく好きな作家を並べようとしたのに、課長は両手を挙げて制した。






< 71 / 222 >

この作品をシェア

pagetop