課長、ちゃんとしてください。
「そーゆーのもいいけどね〜。

たまには恋愛もいいもんだよ〜?


ほらー、経験つんどかないとねー、変な男に騙されちゃったら困るもんね〜。

なんだったら、俺と経験積む〜?」







課長はへらへら笑いながら、ぐいっと顔を近づけてきた。





柔和に細められたきれいな瞳に、驚いたような顔をしたあたしが映っている。






「…………か、課長。


ふざけてる暇があったら、ちゃんと仕事してください。


夜中まで残業になりますよ」







俯きながら言うと、課長はからからと笑った。







「ふざけてるつもりはないんだけどね〜。

でもまぁ、さっさと済ましちゃいますか〜、よーし、がんばるぞ〜」







自分のデスクに戻っていく課長の後ろ姿を、あたしは少しほっとした気持ちで見送った。







< 72 / 222 >

この作品をシェア

pagetop