kiss of lilyー先生との甘い関係ー
 まきちゃんにマグを可愛らしく包んでもらって、先生と”そろそろ”と目配せした。水樹先生はお札を置いて、わたしはバックを持った。そしてごちそうさまでした、と立ち去ろうとしたら、

「ちょっとあんたたち、何帰ろうとしてるわけ?」

「え?」

 至極当然という風にまきちゃんに止められた。

「フライデーナイトはこれからでしょう?」

「まきちゃん、わたしたち酔いを醒ますためにここに入ったのよ?」

「あら酔いを醒ますのは、また酔うための一儀式でしかないよ」

「なにそのユニークな解釈」

「それにユリちゃんが男連れてきたって髭マスターにメールしたら”いまからつまみ持って行く”ってよ。もう着くんじゃない〜?」

「いつの間にそんなメールを…それにつまみって、どこにお酒が、」

「ほら、ジャジャン♪」

「ちょっとここ喫茶店なのに何で日本酒があるわけ?!」

「喫茶店にもいろいろあんのよっ」

 まきちゃんとコントみたいなやり取りを繰り広げちゃっていたら、後ろからドアベルの音がした。

「ハッピーフライデーナイト〜!」

 サンタさんが”メリークリスマス”っていうみたいに、マスターが入って来た。もうだめだ、わたしは水樹先生と顔を見合わせて笑ってしまった。
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