kiss of lilyー先生との甘い関係ー
・・・

 わたしはこういうことに対して、うぶな女でも鈍感な女でもなかった。

 男性の…ましてや恋人といっても過言ではない人の家に行くとなったら、必ずこういうことは想定に入れていたはずだ。

 しかもわたしは性欲をしっかり”摂取”したい人。睡眠欲と食欲と同じように。セックスレスなんて考えられない。だって食欲に換算すると、ごはん食べてないのと同じことでしょ?

 それなのに、すっかり忘れていた。

 というのもこの一年は妙なことに性欲がまったくなくて。14歳の女の子みたいに。

 たぶん理由は、水樹先生に会う前に付き合っていた男性といざこざがあって、もう当分男はいいわと飽き飽きしていたからだと思う。

 食欲がないときに食べないように、性欲がないときはセックスはいらないみたいな、そんなロジックで忘れていた。

 その一年が、彼の一声によって幕を閉じたの。


・・・


「我慢ができないの、せんせい…」

 わたしは素直にそう告げた。

「っ…誠だ…僕の名は、」

 そう言われて胸がドキッとた。

 誠…

 わたしは腕を伸ばし、そっと彼の唇をなぞった。

 キスを求めているわたしに気がつくと、彼は肘を曲げて唇を重ねてくれた。



 彼を愛している…



 このまま時が止まってしまえばいいのにと、本気でそう想った。
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