先生、近づいても、いいですか。
「先生、おはようございます」





春川がふわりと微笑んで俺を迎えた。





「ごめん、待たせたか」




「いえ、ぜんぜん……」






春川は小さく首を振り、いつものように弁当の包みを俺に差し出した。




まだ温かい弁当。



かすかに甘辛い香りが洩れていた。




今日もうまそうだ。






「―――あぁ、いま食べちゃいたいなぁ」






俺はほとんど無意識のうちに、そんなことを呟いていた。




春川が「えっ」と小さく叫んで目を上げた。






「もしかして、朝ご飯、食べてないんですか」





「いや、まぁ、いつもコーヒーだけだから……」






頬を触りながら答えると、春川が目を丸くした。






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