先生、近づいても、いいですか。
なんて………




なんて、あったかいんだろう。






やさしくて、やわらかくて、あったかい。





春川は、俺が長年触れられずにいたものを、いとも簡単に与えてくれる。






そんなことを考えて押し黙っていたら、春川が不安そうに目を上げて、消えそうな声を上げた。






「………あの、ご迷惑なら、断ってくれていいんです」






「えっ!? いやいや、迷惑なわけ………というか、むしろ、泣きそうなくらい嬉しいぞ!」






春川の弱々しい声を聞いて焦った俺は、ほとんど無意識のうちに、そんなことを言っていた。






春川がふっと微かに笑って、






「………泣きそう?」






と首を傾げた。







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