先生、近づいても、いいですか。







「ーーー先生」





「おう、おつかれ」






今日も俺は、春川のバイトが終わるのを駅で待っていた。




ぱたぱたと駆け寄ってくる春川を笑顔で迎え、並んで歩き出す。






「今日は忙しかったか?」





「いえ、いつも通りでした」





「そうか」






俺は小さく頷きながら、自然と春川の手から鞄をとりあげた。





あ、しまった、とすぐに後悔する。




まるで、彼女にでもしているような仕草をしてしまった。





春川が驚いたように丸くした目をこちらに向けている。






「………いや、なんか重そうだったから………」





「あ……今日は持って帰る教材が多かったので………」





「そうか、持つよ。弁当の礼、な?」






春川がくすりと笑って、「ありがとうございます」と言った。






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