先生、近づいても、いいですか。
春川と別れたあと。




窓の外の夜景を眺めながら電車に揺られていると。






「………また」






思わず独りごちて、俺は携帯を再び取り出した。





予想通り、実家の電話番号からだった。






ーーー今さら、どういう用件なんだ?





連絡先は一応教えておいたのに、これまで一度だって、連絡を寄越したことなんかなかったのに。






「………ふぅ……」







ひとつため息を洩らして、止みそうにないバイブ音を無視し、俺はそのまま携帯をポケットに戻した。






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