先生、近づいても、いいですか。
この部屋で、私はほとんどいつも一人です。



お母さんと顔を合わせるのは、深夜の数時間だけ。



あとの時間は、朝も、昼も、晩ご飯のときも、私は一人です。




そのことを寂しいとか悲しいとか、思ったことはありません。



お母さんは私のために一生懸命はたらいてくれているのです。



だから私は、一人でいることが、苦ではありませんでした。




バイトが終わって一人で電車に乗るのも、暗い部屋の鍵を開けて中に入るのも、誰もいない部屋で目覚めるのも、一人で朝ご飯を食べるのも、ぜんぜん平気でした。





………それなのに。



最近は、いつも先生がいてくれたから………。




先生と一緒に帰って、先生と一緒に朝ご飯を食べて。



先生のことを考えながらお弁当を作って。




だから、いつでも先生が一緒にいてくれるような気がしていたのです。





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