先生、近づいても、いいですか。
「…………はぁ……」





重い溜め息をもらしつつ、俺は万年床に仰向けに倒れこんだ。




そのままの体勢で、手探りでリモコンを手にとり、テレビの電源を入れる。





新幹線の駅で解散してそのまま帰宅したから、こんなに早い時間に家に戻ったのは久しぶりだった。




見たこともないバラエティ番組。




テレビ画面の中で楽しげに笑っているタレントたちにぼんやり目を向けながら、俺の頭はまったく違う考えでいっぱいだった。





ーーー修学旅行の間、一日目の自由散策以降、俺は春川と一言も口をきけなかった。




春川の視線を感じながら、春川に背を向け、決して目が合わないようにと必死だった。





春川は、さぞかし変に思っただろう。





でも、そうするしかなかったのだ。





< 176 / 265 >

この作品をシェア

pagetop