先生、近づいても、いいですか。
このままではいけない、と俺は唐突に思った。




このままいくとーーー引き返せないところまでいってしまう。




気持ちを切り替えなければ、と思った。





俺は教師で、春川は生徒だ。



それは絶対に変わらない、圧倒的な事実だ。




絶対に忘れてはいけない事実だ。





それなのに、二人の距離が近くなりすぎて、俺はそのことを忘れかけている。





必要以上に春川のことを考えてはいけない………。





自分にそう言い聞かせていると、




ーーーヴヴヴ




携帯のバイブ音。




見ると、また実家の番号からだ。





………これ以上、俺の頭をかき乱さないでくれよ………





そう思いながら、俺はその音を聞かないように耳を塞ぎ、ふとんを頭からかぶった。





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