先生、近づいても、いいですか。
春川を見ないように、と考えすぎたあまり、その時間はなんともぎこちない授業になってしまった。






「せんせー、なんか今日、元気ないね?」






なんて生徒に言われてしまう始末。






「そうか? ちょっと疲れてるかな……」






適当に答えて、俺はチャイムと同時に教室を出た。





ぼんやりと渡り廊下を歩いているとき。






「ーーー先生」






囁くような声。



でも、俺の耳にははっきりと聞こえた。






「………おぅ、春川」






俺は精一杯の作り笑顔をはりつけて振り向いた。





「どうした?」





「あの、今日、課題の提出日……」






春川はいつになく遠慮がちに呟いた。




もしかしたら、俺が春川を避けているのに気がついていて、気をつかってくれているのか。





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