先生、近づいても、いいですか。
春川はじっと俺を見上げている。




透明でまっすぐな、汚れを知らない瞳。




吸い込まれるように見つめ返しながら、俺は何も言えなくなった。





着信音は続いている。




動こうとしない俺に、春川は怪訝そうに首を傾げた。






「―――先生」





「………うん」





「電話、出たくないんですか」






いきなり核心を突かれて、俺は息を呑んだ。





春川の静かな視線は、俺の心の奥底までをとらえていると思った。




春川に、嘘はつけない。



仮面で隠した素の俺を、春川はいとも簡単に見破ってしまう。




初めに感じたことが、再び俺の心を占めた。





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