先生、近づいても、いいですか。
その頃の俺は、春川には言えないくらいひどい有様だった。




まさに反抗期で、勝手なことばかりして母親を困らせる亭主関白な親父に反発しまくっていた。




高校生になるころには、さすがに落ち着いていたけど。




それは別に、父親への反感がなくなったからではなく、こいつは何を言ったって変わらない人間だ、と呆れて愛想を尽かしたからだった。






「大学受験が近づいてきたとき、俺は全く躊躇せず、県外に出るって決めた。


母さんは何も言わなかったけど、親父は怒り狂って反対した。


一人息子なんだから地元の大学に行って店を継げ、の一点張りで。



でも俺は、そのまま田舎に埋もれるのが嫌で、傾いたクリーニング屋なんかを継ぐなんて以ての外だと思った。


何回も言い争って、どうしても納得させられなかったから、勝手に大学を受けて、家出同然で実家を飛び出したんだ」






春川は何も言わず、ただじっと俺の話を聞いていた。






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