夫婦ですが何か?
キスしたい、キスしたい、キスしたい。
でも、弱った心につけこむような気がしてグッと堪えると視線をテーブルに移していった。
とりあえず・・・・、何かで拭かないとだよな?
そう判断して洗面所に雑巾かタオルがないかと歩きだす。
向きを変え1歩半。
そんな微々たる動きですぐに足は止められ、振り返ればさっき同様に俺のパーカーの裾を掴んで必死に瞳揺れる上目遣い。
「・・・どこ・・・行くの?」
「・・っ・・・・タ、タオル取りに。・・・ほら、テーブル拭かないと」
アホだ俺。
あまりの可愛さに声裏返ったし。
タオルの【タ】の字で見事動揺露わに、行動の意味を示すテーブルを指さし笑って見せる。
それを確かめるようにテーブルに視線移した彼女が、直後に小さく響いた雷にビクッとしてから静かにそっと俺の近くに張り付いて。
「・・・・タオルの場所・・・知りたいでしょう?」
いや、もう勝手知ったるだから場所は把握していて、そんな俺の事だって彼女も理解しているんだ。
つまりこの場合のこのセリフはね・・・・、
『恐いからついて行く』
な、わけで・・・。
どうしよう?
雷に防衛本能いきすぎてて、俺に対しての危機感皆無なんですけどこの子。
馬鹿正直な心臓が痛い。
今もしっかり俺の服を掴んで視線を落としている姿の愛らしい事と言ったら・・・。
「ん・・・じゃあ、・・・教えて」
「・・・・洗面所の前のクローゼットに、」
知ってるんだけどね。
彼女の答えに従順に歩き出せば、しっかり服を掴んだままひよこのようについてくる姿に動悸が強まる一方で。
ヤバいのです・・・。
ヤバいのですよ千麻ちゃん。
俺の禁欲生活もすでにギリギリラインだって千麻ちゃんが一番良く知ってるでしょう!?
それなりに俺は常識的で紳士的であると思う。
よっぽどの場合以外相手が拒む行為に無理矢理引きずりこもうなんてしない。
まぁ、過去に数回・・・それは自分でも痛く反省している部分であり。
だからこそ、まだ特にリハビリ明けていない千麻ちゃんにはもっと慎重に、かなり抑制して接してきていたというのに。
今はその抑制・・・・ちょっとした刺激で吹き飛びそうです。
そんな危うい脳裏に必死に『タオル』と繰り返し打ち込み響かせて、背後の彼女から意識を逸らしてクローゼットを開ける。