夫婦ですが何か?
中から綺麗に畳まれているタオルを一枚取り出すと、彼女を振り返ってそれを示しリビングに歩き始めた。
心音煩い。
余計な熱をあげてくんなよ。
眉根を寄せながらリビングに入り込んでテーブルの前に膝をつくと広がった液体を持っていたタオルにしみ込ませ始めた。
その間もすぐ横で膝を抱えて座って不安そうにこちらを見つめている彼女をチラチラと捉え。
気がつけばおなじみの夫婦漫才すら皆無のこの現状に緊張さえもする。
いつも何話してたっけ?
僅かに液体残ったペットボトルを片手にテーブルの上の水けを全て拭き取って視線を泳がした瞬間。
さっきと負けず劣らずな雷光雷鳴。
ドンッと衝撃大きく響いた音に一瞬だけ驚き、その直後の衝撃に激しく驚いた。
「っーーーー!!!」
「・・・っとぁ・・おど、驚いたよ・・・千麻ちゃん」
「もうっ・・もう・・いやぁ・・・・」
雷の響きに窓を見た瞬間に横からタックルされた体が床に半分倒された。
そして自分の手から落ちたペットボトルが見事残っていた液体を俺の服にしみ込ませる。
でもそんな事に意識もしていられない現状に心臓が破裂しそうに動揺して。
俺の上に乗り上げるように抱き付いて震えている彼女に、哀れみ以上に欲の浮上。
ダメ・・・だって・・・。
「・・っ・・・千麻ちゃ・・・俺帰っーーー」
「っーーーーきゃあぁぁぁ!!」
咄嗟に自分で危険予測とばかりに帰宅を口に仕掛けると、パッと暗転した部屋に驚くより早く響く彼女の悲鳴。
あれ?
コレ・・・、
「停電・・・した?」
「っーーーううっ・・・あっ・・・もう・・・ダメェ・・・」
そんなか細い声を聞きとればトンと胸に得た衝撃。
薄暗くても分かる。
俺に頭を寄せて多分彼女の頬が涙に濡れ始めた。
ああ・・もう・・・・・・愛おしいなぁ。
震えて静かに泣き始めた彼女の背中にそっと手を回して抱きしめてみる。
細くて、頼りなくて、あの言葉の武装がなければ彼女はどれほどか弱い存在なのか。
そうだ・・・・、初めて千麻ちゃんが雷に怯えた日も、こんな風に守らなきゃいけないって思ってたんだった。
『甘えるポイントですよ?』
その言葉に千麻ちゃんは、
『甘え方なんて知りません』
そう答えて・・・・、
でも・・・、
今はこうして甘えてくれるようになった。