夫婦ですが何か?


欲が勝ってはいかんだろう。と、一度きつく目を瞑ってからゆっくり開く。


開いたところで薄暗くて視界は悪いのだけど。



「・・・恐いの・・・分かるよ。・・・縋ってたいのも・・わかる・・けど・・・」


「・・・・はい、」


「・・・・・っ・・・もっと危険なの・・・・絶対に俺」


「・・・・・・・」



雷よりも自分の方が特定で彼女に害を成しそうだと告げると、一瞬の無言に意味を解釈しているのだと悟る。


そして密着させていた顔を上げた事で多分確かめるような視線だと理解した。


薄暗くて把握はしにくいだろうけど苦笑いで彼女の対峙して、でもやはり危うい理性で視線を落として頭を下げた。



「ごめ・・・、結構・・耐えてたんだけどさ・・・。やっぱり・・・密着してたら疼いちゃうし・・・、キス・・したくなる・・・」


「・・・キ・・ス」


「・・・・・キスくらいは・・・何度もしてるけどさ・・・・、その先は・・・・でしょ?」



リハビリ中。


確かにゆっくりでも進んだそれは程よく完了に近いとも感じる。


でもそれは俺だけの感覚で、未だに彼女の感覚は分からない。


まだ・・・俺に対しての抵抗があるのかもしれない。


手袋やフードやサングラスは外せても、肌を合わせるような事はまだ出来ないのかもしれない。


欲は満たしたい。


でも彼女が不快に思う様な行為には踏み込みたくないんだ。


静かになった空間に本当に小さく遠くで雷が鳴る。


だけども今度は抱き付いてこなかった彼女の反応に、それが答えだと理解して息を吐くと口元には弧を描いた。



「ごめん・・ね。・・・出来た男じゃなくて。・・・・カッコよく抱きしめて慰めて千麻ちゃんが安心するまで余裕で体貸してあげたかったんだけどさ・・・・」


「・・・・」


「これ以上・・・密着してたら・・・キスしたくなって・・・」


「・・・・」


「キスしたら・・・・離せない・・・」


「・・・・」


「だから・・・・ごめん・・ね」




言い終わって情けないと片手で顔を覆ってしまう。


無言の彼女はどう思っているのか。


ようやく俺に危機感抱いて距離を保っている?


薄暗い中では感情を読めるほど表情は明確でない。


それでもまっすぐに俺を捉えている感じはある彼女の視線。




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