夫婦ですが何か?
それでも逸る感情も正直で、キスばかりは優しく交わして指先は彼女の太ももを滑って布地に触れる。
印象に残る紫。
彼女らしく決して色気を孕んだ要素の下着ではなく、でも逆にその飾らないデザインに心を掴まれる。
記憶するそれを脳裏に、指をかけ一瞬のためらいの後にするりと下す。
一瞬彼女が強張ったような気もする。
でも、同時に鳴った雷のせいでどれに対するそれかは判断がつきにくい。
ほぼ欲に染まる俺でもやはりわずかな懸念もあって、やっぱり早急すぎたのでは?という考えも否めない。
紳士的理性を後押しすればスッと身を引き彼女を抱きしめて終わるのが望ましい。
ああ、でも・・・・。
千麻ちゃん・・・、
抵抗しないんだもん。
俺を散々苦しめた『おあづけ』の言葉もなくて、ビクビクと怯えながらもこの行為を受け入れている。
いや、怯えているのは雷に対してか?
でもそれはカモフラージュ?
「・・・・・意識が・・・お留守ですか?」
不意に小さく向けられた声に確かめるように顔を覗き込むと、薄暗いのにも慣れた視界で目を細めて俺を見上げる彼女と視線が絡む。
眉根が寄って眉尻は下がっているけれど怒っていたり嫌悪しているわけではないのだと思う。
多分その対象は今も頻繁に鳴って光っての雷で。
パッと光った瞬間に身を縮めた姿が俺に巻き付けている手に力を込める。
「・・・・・なんか・・、いや・・雷で恐いからって理由は分かってるんだけど・・・・」
「・・・・はい、」
「・・・・・なんか、・・・千麻ちゃんが・・素直に俺を受け入れるって・・・慣れなくて」
決して『嫌だ』とか『違う』とか否定的な事を言いたいんじゃなくて素直すぎて戸惑ってしまう。
だって彼女はどんな時であったも俺に強がって強がって、それを追いつめて突き崩してやっと弱音を吐かせていたのが今まで。
だから彼女の方から最初から弱音を吐かれて縋られると逆に困惑して躊躇ってしまうんだ。
本当はこの行為にも怯えているのに雷で誤魔化して、俺に気を使っての素直さじゃないかって・・・。
確かに・・・欲に不必要な思考で・・・意識のお留守。
そんな今もこんな思考をしている段階で欲に対する邪念満載で。
でも、意識を引き戻すのもやはり・・・。